ハンドケア用の外用薬にしばしば尿素が含まれているが、何を意図して用いられているのだろうか。
高校生物では、窒素代謝物の最終排泄経路の一つとしてアンモニアから尿素を生成し(肝臓においてオルニチンサイクルを経て生合成される)、尿から体外に排泄していると習っているだろう。
蛋白工学の世界では、大腸菌から抽出したタンパク質を尿素を含む溶液で変性させて可溶化し、クロマトグラフィーで分画するなどして抽出するのに用いられている。
農業の世界では、肥料として添加されている。
そんな尿素を皮膚外用薬に添加する意義は何なのか?
添付文書などを調べて見ると角化症に用いられるという。
尿素は蛋白を変性させる作用があるはずなので表皮深くに浸透する。
尿素は水分子と水素結合するので水分を保持させることができる。
それにより皮膚の水分量を増やして皮膚の保湿を計るという寸法である。
ただし、皮膚に損傷がある場合(潰瘍、びらん、傷面)や皮膚バリヤーが弱っている(炎症)場合に外用すると刺激感を生じるので外用する部位の状態を確認する必要がある。
時々、白色ワセリンと尿素の混合軟膏が処方されている方にであうが、このような意味があったのかと納得する。
ただし、外用する部位にはくれぐれも注意するように申し添えることが必要だろう。